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不動産レポート



マイナス金利の影響 不動産各社の事業環境にプラスに働く

マイナス金利の影響
不動産各社の事業環境にプラスに働く
「銀行の収益悪化進み過ぎると逆効果も……」

 

日銀が1月29日にマイナス金利を導入したことは瞬く間に世界に伝わり、株価が急降下した銀行や保険会社とは対照的に不動産株は軒並み買われた。銀行は顧客から預かった預金を法人・個人に融資したり、国債運用など以外に一部を日銀に預けて金利収入を得てきたが、それをマイナス0.1%に設定され、預けたお金の0.1%分を逆に日銀に対して支払わなければならなくなったことで銀行収益が圧迫される。その一方で借入金の多い業種である不動産は低金利が続くことを好感され、不動産市場にも資金が流入すると見込まれている。

 

ン低下余地は限定的 株高が住宅購入意欲を刺激

 

不動産各社は今回の追加金融緩和(マイナス金利付き量的・質的緩和)によって支払い利息の減少と本業に対する好影響に期待している。低金利を活用して投資を拡大することも見込まれる。

 

特に不動産大手の有利子負債が巨額であるため、利払い費用の減少につながるとの見方だ。不動産大手の負債構造を見ると、これまでも長期間にわたって続いている低金利の恩恵を生かし、長期負債による資金調達比率を高めてきた。その利率は平均1%程度で長期の借り入れと社債が有利子負債に占める割合は90%超になっているのでマイナス金利の恩恵をすぐに得られることはないが、これから資金を調達する際の金利低下でさらに支払い利息が減るメリットを受ける。

 

マンションなど分譲住宅事業では住宅ローン金利や投資向けのローン金利の低下が需要を喚起する。住宅ローン金利の指標となる長期金利(10年国債利回り)はマイナス金利導入決定前の1月28日に0.220%だったのが今ではマイナスが珍しくなくなった。ただ、金利はマイナス金利導入前から歴史的な低い水準となっていたことから、今後の低下余地は限られるとの指摘も少なくない。大手住宅メーカーの住宅展示場では来年4月の消費税再増税を踏まえた駆け込み需要期待にマイナス金利が加わり書き入れ時がくると見ている一方で、不動産会社の販売担当者や販売現場からは消費者がマイナス金利について質問してくるケースはほぼないとの声が伝わる。マンション購入意欲を刺激するのに最も重要なのは株高だと各社の販売現場は実感している。

 

そうしたなか、不動産経済研究所による全国マンション市場動向を見ると、2015年のマンション発売は前年を6.1%下回る7万8089戸と2年連続で減少した。2020年東京オリンピックを受けて価格が高騰し実需層の手に届きにくくなったことでデベロッパーが供給に慎重になっていることがうかがえる。7万戸台に落ち込んだのは6年ぶりで、首都圏は10%下落の4万449戸だった。2016年は全国で8万4000戸の販売を見込んでいる。同研究所では2015年の分譲マンション1戸当たりの平均価格は4618万円となって前年を312万円上回ったと発表した。3年連続の上昇だ。平均価格は1991年の4488万円を上回り、1973年の調査開始以来の最高価格を付けた。マンション専業最大手の大京などはマンション価格上昇による利益率の向上が見込まれる。

 

新築にとどまらず中古マンションの価格形成にも強気姿勢が染みついた。不動産調査会社の東京カンテイの調べでは、東京23区は7専有面積70平方㍍換算で5000万円台に突入しており、都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)に至っては7000万円台に達する。新築供給が減っていることで立地条件など利便性の高い都心部のマンションが選好されているためだ。

 

長期金利の低下など負債環境の改善が続くことで不動産価格はさらに上昇しそうだが、これは資産価値を重視する投資家にとって重視している点でもある。物件価格の上昇によって購入しづらくなるとの視点ではなく、台湾人など海外の富裕層は資産価格が下落するよりも適度に上昇していくことを歓迎する。

 

日本人にとって現在の分譲価格の上昇は適度とは言えないが、外国人にとっては最近やや円が対米ドルに対して切り上がったとはいえ、足元の円安基調が物件価格上昇分を消しているのが大きい。ただ、銀行による昨年の不動産業向け新規貸し出しがバブル期を超えて26年ぶりに過去最高を更新した中でのマイナス金利がバブルを生みだすとの懸念材料には注意を払っている。

 

将来経済・事業環境は予想しづらい 金融緩和にらない企業体質づくり必須に

 

足元では中国経済の不透明感や原油安といった世界情勢を受けて金融緩和による円安効果が思うようになっていないが、これから日銀の想定通りに円安が進むことになれば景気・企業業績を押し上げオフィス需要も高まる。総合大手デベロッパーにとっては分譲事業だけでなく、ビルや商業施設からの賃料収入アップも手に入れることができる。

 

2015年はオフィスビルを中心に賃料上昇に期待が集まったが、年初の想定よりも賃料の上昇スピードが鈍かった。都市未来総合研究所の調査によると、2015年のビル成約賃料(東京23区)は2008年の6割程度の水準にとどまっているが、オフィス需給で空室を減らす量的なものから賃料上昇である質的な改善が進みそうだ。Jリートによる不動産取得が引き続き活発なこともビル市場を後押しする。同研究所は今年も昨年と同様に1兆5000億円程度の取得額になると試算する。マイナス金利の恩恵を受けることを好感した個人投資家により2月末時点のJリート特化型の投資信託の純資産残高が1月末より増えている。

 

今後の見通しとして、日銀がマイナス金利を導入したのはデフレ脱却として掲げた物価上昇率2%の達成に向けたもので、その目標を達成するためにマイナス金利幅を現行の0.1%より引き下げる用意があるとアナウンスしている。しかし、銀行のバランスシートが不適切に圧迫されれば経済の持続的発展につながらず本末転倒な結果を招きかねないとの指摘も多い。

 

海外リスク要因と相まって経済環境か悪化すれば経済の血液の供給元の銀行の損傷は激しくなり、そうなればマイナス金利に歓迎ムードの強い住宅・不動産会社にとって最悪の事態だ。マイナス金利によって将来の事業環境が見通しづらくなったことは確かで、今後は金融緩和に頼らずに不動産ビジネスの魅力を高めることを忘れてはならない。