実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



消費者はマンション価値の探り合い?販売価格の高騰、Go East加速「東京湾岸エリアはタワマン大量供給が続く」

2017年の分譲マンション市場を見ると、東京都心部を中心とした大都市部と郊外で二極化がさらに増した感が強い。1990年台後半のバブル経済期には、全国の地価が所かまわず上昇する中で、新規供給も強気だった。現在は、当時のバブル経済の勢いはないものの、安倍政権の経済政策であるアベノミクスにより景気に回復感が戻り、地価も一部地点でバブル期をしのぐ勢いに達した。しかし、分譲マンションの新規供給はやや持ち直したとは言え精彩を欠いている。これからは、人口減少に歯止めがかけられない現状を踏まえながらターゲットを明確にした新規開発が行われる見通しだ。


不動産経済研究所の分譲マンション供給動向によると、9月の首都圏は、1年前との比較で13.0%下回って2978戸となり、契約率も64.9%と2カ月連続で好不調の目安とされる7割を切った。都区部の供給は1167戸(前年同月比8.3%低下)となり、都下や埼玉県、千葉県は軒並み2桁の減少だった。特に都下では32.9%も減り、契約率は38.6%にとどまった。地域別に見て契約率が7割をキープしたのは神奈川県(876戸=契約率70.9%)のみだ。


こうした売れ行きの鈍さは、売り値が上がり過ぎたためだ。マンション調査のトータルブレイン(東京都港区)の久光龍彦社長は、「新築マンションの販売価格は2012年と比較して物件によっては35%アップしている」と話す。


都心部は地価上昇の直撃と建築費の上昇によるダブルパンチが効き、郊外マンションの地価は都区部より安いものの、大規模案件が多く建物比率が高くなることで建築費の高騰が影響している。「ざっくり1000万円は建築費が押し上げている」(久光社長)。郊外マンションの価格は、アベノミクス前に専有面積70㎡で3500万円と1坪当たり165万円ほどだったものが、坪230万円まで上った。


●都区部の資産価値を求める 富裕層やキャリア志向の市場に


マンション市況は、地価上昇とともにブームで語れた以前のような現象はもう起きない。マーケットは面で見るのではなく、点で動く時代に突入している。そうした面から東京都を見ると、都心部・都区部は、富裕層や高収入を得るアッパーサラリーマン、共働きで稼ぐパワーカップル、60歳以上のアクティブシニアのマーケットと言っていい。


年収ベースで判断すると、40歳台で1300万円ほどを稼ぐアッパーサラリーマンが6000万~8000万円台のマンションを買い、キャリア志向のパワーカップルは、夫婦で2000万円を超えて7000万~9000万円の物件を物色する。アクティブシニアは、利便性の良い駅近のコンパクトマンションをキャッシュで買い上げる。相続需要としての当て込みもある。


晩婚や離婚が増え生涯独身も少なくない。そうした単身者もコンパクト市場に流れ込む。富裕層に至っては、伝統的に街の評価が良いいわゆる地位の高さと利便性の両方を求める。


こうした需要層に共通しているのは資産価値を求めていることだ。山手線の内側などは昔から富裕層を中心に人気のエリアであるが、価格が急ピッチで上がったことで城東・城北エリアに人気が集まり出した。江東や墨田、葛飾、江戸川、足立区、北といった区域は地価が城南・城西よりも割安なわりに都心部に近いアクセスの良さで多忙なキャリア志向の消費者が職住近接の観点から着目している。


実際、資産価値は着実に上がっており、特に東京五輪の開催地に近い江東区豊洲や有明のマンション売り値はうなぎのぼりの様相を呈している。豊洲は十数年前に1坪当たり170万円ほどだったのが今では中古マンションでさえ300万円超にまで達する。新築の場合は、350万を超える水準である。


アーバンドックパークシティ豊洲は、旧石川島播磨重工業(現IHI)の造船所ドッグ跡地の再開発プロジェクトとして三井不動産とIHIが2006年に開発したマンションだが、中古マンションとして販売中の売り出し価格は86㎡の住戸で1億8000万円と坪370万円となっている。開発後間もない2008年の取引事例では、74㎡の住戸が6000万円強で成約していることを考えれば上昇幅の大きさには目を見張るものがある。

 

東京湾岸エリアはタワマン大量供給が続く


●湾岸のタワマン大量供給続く 行政に容積率緩和の廃止の動きも


不動産売買仲介を手掛けるリスト・サザビーズ・インターナションル・リアルティ(東京都中央区)によると、こうした資産価値の上昇幅を受けての資産の買い替えが少なくないという。例えば、60歳前半の人の事例として、2004年に4300万円ほどで新築購入した65㎡のマンション住戸が6300万円で売れ、売却益と退職金で世田谷区の中古マンションをローンなしで手に入れたり、働き盛りの40歳前半の人の場合は、約3900万円(14年新築購入)を5000万円ほどで売却して次の買い時までとして賃貸住宅に住み替えた例もあるという。


東京湾岸エリアでは、1991年以降からのタワーマンション供給は約3万戸に達しているが、これから2027年までにさらに1万6200戸の供給が予定されている。パークタワー晴海(1076戸)とシティータワーズ東京ベイ(1539戸)が2019年に竣工するのを皮切りに、再開発事業に伴う供給も相次ぐ。2021年には豊洲(1200戸)や有明北(300戸)、月島一丁目西仲通り地区(490戸)が完成し、勝どき東地区(3120戸)や晴海五丁目西地区(5650戸)などと大量供給が続く。


ただ、こうした大規模マンションの大量供給に行政サービスが追い付かない事態も発生しており、中央区では、これまで区内の定住者を増やすために実施してきた政策を転換することを決めた。「定住型住宅の容量緩和の廃止」などを含めた地区計画の改定を急ぐ。容積率の緩和を廃止することでタワー型などの大規模マンションを建ちづらくすることで、待機児童の問題や児童数が小学校や中学校の許容量を超える事態に対応しようとしている。


マンション開発余地が限られる東京ならではのこうした悩みも人口流入があってのものだが、ニッセイ基礎研究所の「東京都区部の若年人口-1970年~2015年に20~24歳の人口は63%減」と題したレポートによると、2015年までの45年間に23区の総人口は4.5%増えているが、15~29歳層は52.3%と大幅に減少し、20~24歳は63.1%と大幅に落ち込んでいる。将来のマンション需要を支える世代が確実に減っていることを裏付けている。