実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



ジレンマ抱える不動産マーケット:中古住宅再生と収益物件の新規供給「相反するベクトルが同居する」

不動産業界は人口減少を機に新たなフェーズに突入した。住宅需要が縮むことで新築供給ではなく、いかに中古住宅を生かすか。つまり、流通市場に乗せて内需拡大に役立てるかだ。そこに向けて白羽の矢があった事業がリノベーションである。空き家が820万戸を超えている中で、この買い取り再販事業の強化に業界が一斉に動き出した。もう一つある。人口が減っているにもかかわらず、相続増税を契機に収益物件の新規供給が止まずに依然として活発なことだ。今回、需給バランスを考えた上で相反するこの2つのビジネスを追った。

 

●不動産大手から中小まで参画 優良な中古資産の争奪戦、激しく

 

新築分譲を主力事業に置く不動産大手が新たにリノベーション市場に参入してきたことで競争は激しさを増している。東急不動産は、2015年に東京都心立地に特化して一棟リノベーション事業に参入した。賃貸マンションを丸ごと一棟買い取り、共用部・専有部ともに品質の高い新築分譲並みの仕様に改修して販売する。ファンドなどが運用する物件を中心に空室を改修して順次販売するため、競合の影響を受けにくくインカムゲインも得られることを特徴とする。


NTT都市開発は、2016年に一棟リノベーションに参入した。リノベを得意とするリビタと、自社の高級マンション開発のノウハウを融合して都心で展開する。系列リートから物件取得するなどグループ基盤を有効活用していく。

 

中堅デベロッパーのフージャースコーポレーションでは、ツクルバ(東京都目黒区)が手掛けるリノベーション住宅特化のオンラインマーケットとMARK STYLER(東京都渋谷区)が展開するアパレルブランドとの共同プロデュースにより築19年のマンションの1室をリノベーションした。見せる収納を生かした店舗のディスプレイを意識した間取り・内装・家具を採用するのが特徴。玄関脇の土間空間には試着室としても利用できる
ウオーキングクロゼットを設けている。第2弾以降の開発も視野に入れるという。

 

リノベーション専業のスター・マイカは、こうした各社の猛追をかわすべく事業展開エリアの拡大に舵を切った。これまでは東京・城南と横浜を中心にリノベ物件を供給してきたが、これに加えて2018年度以は東京23区とさいたま市エリアに拡大する。今後2年間で年間100戸を供給する計画だ。同社も賃貸中の物件を購入して退去後に販売するもので現状1800室以上の在庫を保有しているという。定額制リノベーションプランの提供に加えて、竣工後の感覚を疑似体験できるバーチャルリアルティでの提案も進めている。

 

●1000万円の大改装で魅力アップ 中古再生事業の可能性を追求する

 

こうした中、不動産業界の現状を端的に表しているのが東急リバブルの取り組みだ。同社では、リノベーション事業と投資家向けの収益物件事業を加速している。


まずリノベーションでは、年間10棟ペースでの供給を目指しており、一棟リノベ供給で首都圏トップの座を狙う。そのリノベーションマンションの良さを一般消費者に知ってもらうための取り組みとして、「プレゼンテーションモデル」(商標登録済み)を埼玉県朝霞市内で手掛けている一棟リノベプロジェクト「ルジェンテ・リベル志木」の棟内にこしらえた。


このプロジェクトは、東武東上線の志木駅から徒歩8分の場所にある築20年を超えている大手企業の社宅を買い取って進めている。規模は地上9階と10階建て。総戸数は99戸で、現在も27戸ほどが賃貸入居している。99戸のうち、これまでに60戸ほどをリノベーションして8割ほどを販売しており、賃貸中の住戸に関しては、賃貸更新時期に現在の計画を説明して退去住戸が出たらところから順次リノベーションを施す。


全戸南向き。専有面積は77㎡以上の3LDKが中心となり、価格は3280万円から。プレゼンテーションモデルは、もともと3LDKだった79㎡の住戸を1LDKに間取りを変えるとともに、住空間のモダンさを追求した。リノベーション費用に1000万円を投じたという。同社によると、通常タイプならば、リノベーションにかける費用としては500万~600万円、少し格上でも700万円ほどだが、このプレゼンテーションモデルは、どこまで新築に迫れるかというリノベーションの可能性を追求するのが目的だったことから、資金を惜しまず外部のプランナーとも提携して作り上げたという。

 

実際プレゼンモデルを訪れた顧客からの反応は上々。プレゼンモデル住戸の販売価格は4480万円、志木駅周辺の新築相場が4000万円台後半であることを考えるとそう割安とは言えないものの、割高感を払拭するだけの作り込みを見た消費者からは、自分の好みにあった住宅づくりの実現性についての質問が絶えないという。

 

中古再生事業の可能性

1000万円のリノベ費用を投じた住戸はゴージャスさに目が引かれる

 

中古再生事業の可能性

リノベ前のデットスペースをちょっとした書斎風に仕立てている

 

●分譲不向きの土地に収益物件 個人投資家向け開発・販売を加速

 

そして、同社が注力するもう一つのビジネスが、投資家向けアパートの開発・販売だ。2015年9月に初弾販売した投資用アパート「ウェルスクエア」シリーズを拡充している。主に分譲マンションや戸建て住宅に適さない土地の有効活用として、鉄骨造のアパートやタウンハウスを展開してきたが、これに加えて、今年春の大型連休明けに壁式鉄筋コンクリート造(WRC造)のアパート商品開発を新たに開始した。


これまでは3階建てで約3億円の商品が中心だったが、WRC導入により4~5階建ての商品(約5億円)をそろえることができるようになった。これらのアパートはリーシング活動により満室稼動した上で販売するのが基本的な考え方だが、満室前に買い手が付けば売り渡す。2015年1月の相続税法の改正に伴い課税対象者が増えたことで、相続税対策としての収益物件に対する熱は冷めないのが現状だ。これまで塩漬けだった土地を今が売り時と考える地主と、史上最低の金利が相まって勢いづく個人投資家がうまくマッチングしている。同シリーズの利回りは5%台で設定している。

 

開発エリアは、東京城南・城西エリアから城東・城北エリアまで拡大し、都心部での展開も視野に入れている。2017年度中に20棟の開発を予定し、来年以降は売り上げ100億円・年間30棟の開発・販売を目指す。渋谷区で4階建て総戸数28戸、目黒区でも4階建て総戸数13戸などのプロジェクトが進行している。


ウェルスクエアは、アパートという言葉から連想するイメージとは違うものとなっており、建物の外観はもちろん、外構・アプローチまで建築士によるデザイン監修を行い、すべての物件に宅配ボックスやオートロック機能、防犯カメラなどを備えているのが特徴だ。不在時でも荷物のやり取りをスムーズにした。防犯面も強化。単身者・ディンクス向けアパートとしての商品力を高めている。


相続税法改正に加えて、昨年導入されたマイナス金利施策で運用難に陥った金融機関が積極的に融資している。1兆円を超える融資が新たな大家を生み出している。


住宅・不動産業界は、住宅ストック活用と地主・投資家に対応した収益物件の新規供給という異なるベクトルが同居するジレンマを抱えながらビジネス展開している。