実績豊富!東京5区エリアの不動産売買 信義房屋不動産(しんぎふさやふどうさん)

不動産レポート



公示地価が強含み 上昇率は西高東低 インバウンド需要は昨年後半に拡大:住宅地10年ぶり、商業地が3年連続、地方圏26年ぶりに上昇

地価の上昇傾向が全国的に強まっている。日本で最も高い土地の値段は、東京・銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」で12年連続となった。1㎡当たり5550万円、1坪当たり1億8300万円を超えている。都心部が不動産バブルのにおいを放つ中で、東京や大阪、名古屋などの大都市部に限らず、観光需要がある地方にまで波及している。国土交通省が3月27日に発表した1月1日時点の公示地価で明らかとなった。

 

■北海道ニセコ・沖縄などインバウンド需要


みずほ信託銀行系のシンクタンク、都市未来総合研究所の「不動産売買実態調査」によると、2017年の取引額は、4兆5775億円と前年比14.4%増加した。ここのところ投資利回りの低下が進んできたことで取引総額が減っていたものの、3年ぶりに増加に転じ、1997年の調査開始から3番目の高水準となった。特に海外投資家の対日投資がおう盛。外資系法人による不動産取得額は調査を始めてから初めて1兆円を超え1兆1019億円に達した。地価上昇で海外投資家のプレゼンスが一挙に高まっている。


法人仲介を得意とする不動産大手は、「首都圏の我々の取扱件数を見ると、おおむね3億円以上の大型取引は前年比162%(17年4月~18年2月)」となっており、その内訳はオフィスなど事業所が220%、住居系が164%、収益不動産が156%だったという。


全国の地価変動率を見ると、住宅地平均は10年ぶりに上昇し、商業地が3年連続、地方圏では26年ぶりの上昇となった。地方圏の上昇をけん引したのが札幌・仙台・広島・福岡の地方4市だった。今回の地価の特徴を見ると、住宅地上昇率トップ10は、1~3位に北海道倶知安町が独占し、4~9位が沖縄県の地点が占めた。10位が福岡市。いずれも訪日観光客で賑わいを見せるエリアばかりだ。


その倶知安町は、ニセコの観光圏域の市街地だったり、スキー場周辺だったりとリゾート需要が地価を押し上げている。北海道新幹線建設工事の進展や、リゾート施設で働く従業員などの宿舎需要が強まっているほか、外国人による別荘地需要がおう盛だ。滞在型のコンドミニアムなどへの投資も活発で訪日客需要がけん引する。

 

沖縄県は、那覇市と浦添市の地価上昇が顕著だった。那覇は新都心エリアに位置していることで県内外の需要が底堅く、浦添はモノレールの延伸によって利便性の向上に対する期待感が押し上げる。

 

北海道ニセコ・沖縄などインバウンド需要

 

■大阪圏の地価トップは心斎橋、上昇率1位は道頓堀


こうした訪日客マネーは、商業地へも引き続き流入しており、とりわけ店舗・ホテル需要を受けて好調だ。このインバウンド需要の拡大は、2017年前半と後半を比較すると後半が拡大しており、インバウンド需要に陰りはない。投資対象についても、これまで主役だったオフィスから店舗やホテルといった商業用不動産に移っている。


商業地の全国上昇率トップ10でも倶知安町が1位だったが、2位には大阪市中央区道頓堀1丁目の「づぼらや」(上昇率27.5%=1㎡/510万円)、3位に京都市南区東九条の「KKDビル」(同27.3%=同210万円)となった。京都市は4位と6位にも顔を出し、4位に東山区祇園町北側の「豊田愛山堂」(同25.8%=同195万円)、6位に東山区三条通大橋の「GOZAN HOTEL」(同25.0%=69万円)がランクインした。


上昇傾向を全国的に見ると、西高東低となっている。大阪圏の平均変動率は5年連続の上昇となり、上場幅も昨年よりも拡大。大阪圏の最高価格は大阪市中央区の「クリサス心斎橋」で1㎡あたり1580万円(22.5%上昇)と昨年1位の梅田からトップの座を奪い返した。づぼらやの上昇率は大阪圏でトップ。近畿圏で人気の商業地や観光地の地価上昇が目立つ。


名古屋市にも投資マネーが大阪同様に流入しており、商業地の上昇地点は昨年の179地点から197地点に増加した。2017年3月までの3年間で大名古屋ビルヂングやJPタワー名古屋、JRゲートタワー、グローバルゲートなど大型ビルの開発ラッシュが続いたことで街の活性が進んだと見る声は少なくない。

 

 リニア中央新幹線の期待感もあってホテルや飲食店の需要が強く投資市場は活況を呈する。住宅需要も活発だ。地上40階建てタワーマンションや再開発により名古屋市内の住宅地の上昇地点数は前年の232から245地点に増えた。

 

 大阪圏の地価トップは心斎橋、上昇率1位は道頓堀

大阪圏の地価トップは心斎橋、上昇率1位は道頓堀

 

 ■東京の地価に天井感漂うも都心周辺部の上昇幅が大幅拡大


ただ、投資マネーが逃げ水のように東から西に向かっているわけではない。東京でも投資マネー流入が続き、商業地の地価を押し上げている。商業地は、東京23区で前年の5.5%から6.4%と上昇幅を拡大し、都心部で7.1%と大幅に上昇した。渋谷区(9.2%)や中央区(8.4%)、台東区(7.3%)など加えて、城北・城東地区での拡大が目立っている。


国内最高の地価を抱える銀座など東京都心部の商業用不動産のキャップレート低下はいっそう進んだものの、不動産協会など業界団体からは、収益還元法のもとに取引を行っていて不動産バブルの状態ではないとの認識が多い。賃料収入の安定性と市場規模の大きさなどは世界的に評価が高いことが大きい。特に2020年東京五輪の開催を控えてホテルに対する投資意欲は高まっている。新規供給計画も相次いでいる。


住宅地に地価高騰感は強い。首都圏を見ると、建築費の高騰によって郊外エリアの分譲マンションは消費者の所得が販売価格に追いつかない状況。売れ行きは都心部と大きな差が出ている。しかし、都心部のマンションの売れ行きは好調だ。実需にとどまらず幅広い消費者の思惑が入り混じり価格には上昇余地を残しているとの見方が少なくない。


都心部のマンションは、今回の公示地価で、これまで常に全国トップだった千代田区番町(385万円)を抜いて港区赤坂1丁目(401万円)が取って代わって1位となった。赤坂エリアはIT企業の経営者などによる新興富裕層のマンション需要がけん引力となった。


ただ、マンション用地の取得は難しくなっている。ある仲介大手は、「昨年末の入札案件では、山手線沿線で想定を上回る入札が相次いだ」と話す。東京都心の高騰に付いていけない一般勤労世帯は、都心アクセスが良く割安な地域に流れ始めている。例えば城北・城南エリア。江東区は、東京湾岸エリアでのマンション開発が続くほか、江東区と墨田区の区境の住吉や江東橋エリアでの用地物色が続く。


大成有楽不動産は、同エリアの賃貸マンションを解体して分譲マンション開発に着工している。その近くでJR西日本不動産開発が配送センターの解体に着手しており、地元では分譲マンションの開発だと見られている。不動産各社とも大手町駅まで電車で10分程度という立地の割にこれまで割安で放置された用地にビジネス好機を見いだす。首都圏の分譲マンション市場は、都心と準都心・郊外と三極化の様相を呈している。

 

地価は超金融緩和が急浮上させた。賃貸マンションなどの収益物件では、東京23区で価格の天井感が募っており、融資を使ってのリターンでは収支が難しい状況となりつつあるのも事実だ。都内の優良物件は、市場価格と金融機関の評価との乖離が軒並み多額となるケースが少なくない。銀行の保守的な観点で見た担保評価の額が市場価格に追いつかないのが実態。例えば10億円以上の売り物件があると、その評価額は5~6割ほどにとどまる。売買価格と鑑定評価額の乖離率も3~4割開く。これが逆回転する状況として金融情勢が変わることだ。米欧の利上げを受けて日本の局面が変わる可能性を指摘する声も上がる。


地価動向については、東京オリンピック開催を待たずに変調するか目が離せない状況だ。